小説のドラマ化という存在を知らない子ども時代、ドラマはドラマ、映画は映画、小説は小説だと思っていました。
大人になり、本屋さんに行くようになり、帯を見ると「待望のドラマ化」という言葉が目立つように書かれていることに気付きます。このことから、
小説<ドラマ、映画
であると考えられていると言うことが分かります。
ちょっと悲しいですね。
と思っていると、最近は「話題のドラマの原作」という紹介を見かけることも出てきました。これは、先にドラマを作ってからその脚本を小説にしたものかもしれませんが、先に小説があり、ドラマになってから、原作に注目が集まったという流れであれば嬉しいですね。
今日はそんなドラマで話題になり、小説に注目が集まったものを紹介します。
著者:池井戸潤
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東京中央銀行大阪西支店の融資課長・半沢直樹のもとにとある案件が持ち込まれる。大手IT企業ジャッカルが、業績低迷中の美術系出版社・仙波工藝社を買収したいというのだ。大阪営業本部による強引な買収工作に抵抗する半沢だったが、やがて背後にひそむ秘密の存在に気づく。有名な絵に隠された「謎」を解いたとき、半沢がたどりついた驚愕の真実とは――。
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探偵半沢が絵画に込められた謎を解く、江戸川乱歩賞出身の池井戸潤、真骨頂ミステリー!
『半沢直樹1 オレたちバブル入行組』の前日譚となるシリーズ原点にして、「やられたら、倍返し!」出典:Amazon
評価:★★★★☆
レビュー:
池井戸潤は映像化することを想定して小説を書いているのかと思うほど会話の応酬が多く、キャラクターが生き生きとしている印象を受けます。
物語はドラマで映像化された半沢直樹の前日譚、つまり過去編です。
この点が少し悲しくなり、4つ星としました。
最新刊と思って手に取ると、過去の話だったとき「え?最新刊なのに話が進まないの」と思ってしまいます。
過去編ということは、つまり現在より先の展開を知ることができません。
また、現在で生きている人が過去編でどんなにピンチに陥っても「現在で生きているんだし、助かるんだろうな」とメタ的に見てしまい盛り上がれません。
そのあたりも考えて、現在編で登場していないキャラクターを出すものもありますが、そうなると「現在編で出てこないってことは、大したキャラクターじゃないんだな」となってしまいます。
半沢直樹というドラマを期待して読むというよりは、池井戸潤の作品として読んだ方が開き直れると思います。でも、読み進めると頭の中で半沢直樹のドラマが上演されています。
会話の応酬が好きな方、半沢直樹のドラマを見て小説に興味を持った方にお勧めです。
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