桃太郎や浦島太郎といった昔話は実は今出版されているものよりも残酷だったという話はよく聞きますが、最近出版されている絵本は私が子供のころ読んでいた内容よりさらに表現が柔らかくなっているそうです。
表現が柔らかくなり、刺激を抑えられるならそれは良いことだと思いますが、重要な主旨が変わってしまっては元も子もないなと思います。
さて、今回は表現が柔らかくないほどグロテスクな表現があり、かつしっかり読んでいると頭がおかしくなりそうな本を紹介します。
タイトル:アリス殺し
著者:小林泰三
不思議の国の住人たちが、殺されていく
どれだけ注意深く読んでも、この真相は見抜けない
悪夢×メルヘン×ミステリ!
栗栖川亜理はここ最近、不思議の国に迷い込んだアリスの夢ばかり見ている。ある日、ハンプティ・ダンプティが墜落死する夢を見た後、亜理が大学に行くと、玉子という綽名の博士研究員が校舎の屋上から転落して死亡していた。グリフォンが生牡蠣を喉に詰まらせて窒息死した夢の後には、牡蠣を食べた教授が急死する。夢の世界の死と現実の死は繁がっているらしい。不思議の国で事件を調べる三月兎と帽子屋によって容疑者に名指しされたアリス。亜理は同じ夢を見ているとわかった同学年の井森とともに冤罪を晴らすため真犯人捜しに奔走するが……邪悪なメルヘンが彩る驚愕の本格ミステリ。出典:Amazon
評価:★★★☆☆
レビュー:
夢の世界と現実世界が繋がっている世界観。夢で殺人事件が起きると現実世界の該当する人物が殺されます。
そして、夢の世界が『不思議の国のアリス』というファンタジーの世界。
この設定だけで頭が痛くなりますが、登場人物たちの会話の応酬がすごいです。
一例を挙げますが、これがずっと続きます。
「君は今日、誕生日かい?」
「いえ、今日は誕生日じゃないわ」
「じゃ、君は今日、非誕生日なんだね」
「そうね。もしそういう言葉があるとすれば」
「こんな偶然あるなんて!僕も今日、非誕生日なんだ!」
「おまえはトカゲみたいなものか?」
「トカゲ?それはなんだい」
「おまえみたいなものをトカゲと言うんだ」
「じゃあ、君は今、おまえはおまえみたいなものかと尋ねたのかい?」
「うん?」
「そりゃそうさ。僕は僕だよ!」
ちょっと完全一致ではないですが、このようなやりとりがずっと続きます。
しかし、事件は起こり続け、主人公たちは事件の真相に迫っていきます。
ミステリという観点から見ると、しっかりしており、最後の種明かしでは驚かされました。
もう、何を信じていいか分からなくなる内容です。
どういう視点で読むかで評価が分かれる作品だと感じました。
頭が痛くなる会話のやり取りが好きな人、ちょっとグロテスクでも構わない方におすすめです。
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