タイトル買いしている本が多い中、今日は知人からの紹介で読んだ本です。
普段から私は「おすすめの本を教えて」と聞きます。
その人のことを「この人はすごい」と思ったときに聞きます。
自分が好きなジャンル以外で面白い本を探すときに便利な言葉です。
きっかけは、学生時代にとある植林ツアーに参加した際に様々な年代、経歴の方と会う機会があり、こんな人たちと会う機会なんて無いと思うから何でも質問してみて、と主催者に言われたことです。
とっさに「読んだ方が良い書籍はありますか」と尋ねました。すると個性あふれる書籍をたくさん紹介され、全部読んでみたいと思いました。それらのレビューはまた後程。
本日は、また別の機会に知り合った知人から紹介を受けた本です。
タイトル:熱源
著者:川越 宗一
降りかかる理不尽は「文明」を名乗っていた。
開拓使たちに故郷を奪われ、集団移住を強いられたのち、天然痘やコレラの流行で妻や多くの友人たちを亡くした彼は、やがて山辺安之助と名前を変え、ふたたび樺太に戻ることを志す。
文明を押し付けられ、それによってアイデンティティを揺るがされた経験を持つ二人が、樺太で出会い、自らが守り継ぎたいものの正体に辿り着く。
金田一京助がその半生を「あいぬ物語」としてまとめた山辺安之助の生涯を軸に描かれた、読者の心に「熱」を残さずにはおかない書き下ろし歴史大作。
出典:Amazon
評価:★★★★☆
レビュー:
人から紹介された本は、最初から読む理由があるので読みやすくて好きです。
「この本は面白いのかな」と思いながら読むと集中できません。ましてや、タイトル買いして読んでいるときは「買って正解だったか」という疑念が入ってしまいます。
そういった心配もなく、また直木賞受賞作ということで、本作はゆっくり集中して読むことができました。
作品の内容はアイヌ民族の衰退と戦争、学問と教育、ロシア・日本・アイヌそれぞれの視点から描かれていて、3つの映画を見たような濃い話がポツポツと展開していました。
3本の映画を観たよう、と言っても小説は良いです。映画は自分の理解が追い付かないままどんどん進んでいきますが、小説は自分のペースで戻れますし、止まれますし、自分の都合の良い解釈で進められます。
主人公の容姿からそうです。話が壮大であれば壮大であるほど、小説の方が良いと感じます。
本作はまさにそう思える本でした。学問や教育が人生に与える影響という視点は非常に心を打たれる部分でした。
ストーリー展開は、『鹿の王』のような原始的な生活をしている民族が、西洋文化を知り、葛藤を抱えるという展開から始まります。その後、思った以上に時代が進むのが早く、もう少し間間を埋めて欲しいと感じる部分もありました。
いつも佳境に立たされる展開が続くので、たまにはゆったりと楽しい生活をしているところを読みたいと感じさせます。それは、例えばドラゴンボールで戦闘に明け暮れる孫悟空の日常編を垣間見たいと、そんな印象を受けます。
そんな緊迫感が続く話が多く、またキャラクターが良かったです。普段ミステリーしか読まないので、こうした歴史や社会を軸にした小説は展開が読めず、疲れました。
時間がある時にゆっくり読み直したいなと思います。
事実に基づいた小説、歴史・教育・文化に興味がある方にお勧めの一冊です。
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